サイト管理人が不定期に、現場の写真や工事施工例などを載せています。
ときどき業界団体や発注者さんに毒も吐いておりますがご容赦ください。
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2008.09.01 Monday
国土交通省と総務省は9月12日、予定価格の事前公表の取りやめや
歩切(ぶぎ)りの撤廃、最低制限価格の引き上げなどの緊急要請を
都道府県、政令市に通知した。
政府の経済対策閣僚会議が8月29日に発表した
「安心実現のための緊急総合対策」が、建設業の資金調達の円滑化や
適正価格での契約の推進を盛り込んだことを受けての要請だ。
上記のニュース記事はこちらから↓
http://www.nikkeibp.co.jp/news/const08q3/586261/総務省さんからの通達文書の全文はこちらから↓
建設業における「安心実現のための緊急総合対策」の適切な実施について上記通達文の第7番目に
「いわゆる歩切りによる予定価格の不当な切り下げは
厳に慎むとともに、予定価格の作成に当たっては、資材等の
最新の実勢価格を適切に反映させること。」と明記されています。
ちなみに歩切りと言うのは・・・
「土木工事等の入札を行う際に、工事の発注者である役所が、
役所での積算価格を予定価格とはせずに、
積算価格から積算価格の10%程度をあらかじめカットした金額を、
入札の予定価格とする。」という事だそうです。
例えば、設計金額100万円の土木工事があるとします。
ここでいう設計金額と言うのは、お役所のコンピューターにある
積算専用のソフトで弾き出された積算価格だと思ってください。
そして、国土交通省や都道府県等は
積算ソフトで100万と言う積算金額が弾き出された場合、
入札の予定価格(最高金額)も100万で入札が行われます。
が、以前は多くの市町村では
積算金額である100万円から、その内の約10%に当たる10万円を
カットした金額である90万を入札の予定価格(最高金額)と
しているところがほとんどでした。
今現在もそういう市町村さんが多いのが実際です。
そして、ほとんどの場合は
歩切りを行っているかどうかの公表はされていません。
とは言っても、建設業者のほうでは・・・
今は建設業者も積算にコンピューターを
導入されているところが多いですから
「ここのお役所は積算の値段が安いなぁ・・・
きっと歩切りしてはるんやろなぁ・・・・」と気付きます(笑)
ですので、歩切りは・・・
お役所さんは公表はされていませんが
建設業界の中では「公然の秘密」という類のものです(笑)
当社が入札に参加させていただいている
身近なところでも御所市役所さんが歩切りを実施されています。
ただ、御所市役所さんの場合は、
歩切りを実施されるに当たり、事前に建設業者に対しての
「歩切り実施の説明会」のようなものを開催され
「市の財政が非常に厳しい為に、財政の支出を抑える必要がある。
ついては市発注の公共事業に参加されている各事業者の
皆さんにも、財政支出を抑える上でのご協力を願いたい。」
と歩切り実施の趣旨を説明され、事業者からの同意も得た上で
積算価格から10%の歩切りを実施されています。
(俗に言う不当な歩切りではありません。)
さて、そこで思うのですが・・・
果たして「歩切り」は不当なことなのでしょうか?
僕の個人的な見解としては「不当」とは思っていません。
役所には入札に際して「予定価格」を定める権限があり、
国が定める積算基準で積算した価格「積算価格」が定価であるとすれば、
地方の役所(地方自治体)が歩切りを行い定める「予定価格」は
入札というオークションを開始するに際して、
地方自治体が独自に定める「競り値開始価格」ということになります。
公共工事の入札と言えども
オークションの一種なのですから、
競り値の開始価格の定めは出品者の自由意志だと思います。
ただ、
入札の対象が「公共工事(公共施設の製造設置)」という
内容のものですから、手抜き工事を誘発するような極端な
安値での競り値開始価格の設定や、
地方自治体の利益のみを追求し受注企業の健全な企業活動を
阻害するような安値の競り値開始価格の設定は
避けていただきたいとは思いますが。。。
そういう意味では
国が定める積算金額から5%〜10%くらいの歩切りと言うのは
むしろ妥当なものではないのか?と思います。
ただ!
出来れば「歩切りの有無」は公示していただきたい。
お役所が歩切りを行った結果、
工事を落札した建設業者が薄利になってしまうのは
「落札率」との関わり合いが出てくるからでしょう。
現在、建設工事の談合については一般的に
「落札率90%以上の工事は談合が行われていた疑いが強い。
「健全に競争すれば落札率は75%から85%になる。」と言われています。
ですが、
お役所さんが歩切りの有無を公示されていなければ、
仮に建設業者が積算価格の85%という価格で入札を行っても、
入札結果の書類上、落札率は予定価格の94%ということに
なってしまいます。
積算金額100万円の工事があったとして、
お役所が歩切りを行い設定される入札の予定価格は90万円とします。
ですが、業者は積算ソフトで積算を行い、
そこから企業活動を行う上で妥当と思われる金額、
80万円とか85万円とかいう金額での入札を行います。
この時点で業者の中では
「よーし、うちは80%、85%で入札した。」という思いです。
しかし、入札が終わりお役所さんが公表される資料に於いては
落札金額÷予定価格=落札率という計算式で落札率が計算されますから、
落札率は予定価格の89%、94%という約9%も高い数値となってしまいます。
歩切りにおける一番の問題点は
ここに現れてくるのではないでしょうか??
一般市民の方には建設業者の本当の落札率が見えません。
そして「公共工事は高い値段で仕事を落札してるなぁ・・・」という
誤解が発生してくるのではないでしょうか???
ちなみにですが・・・
平成22年現在、奈良県土木部さんの入札における最低制限価格は・・・
積算金額の80%〜85%くらいです。
積算金額の80%〜85%が最低制限価格というのは、
正直、健全な企業活動を行っていく上で妥当な数値だと思います。
その数値ならば・・・
会社に純利益も出にくいですが純損失も出にくい、
いわゆるベタな企業活動が出来るのではないかと思います(笑)。
うちは舗装工事が専業ですが、
積算金額の60%〜65%は直接工事費(材料費等)で消えます。
そこに年間の会社の維持経費等諸々を加えれば・・・・
やはり積算金額の80%〜85%での入札が出来ないと
会社は機能不全に陥ってしまうでしょう。
ですから、
歩切りを行うお役所さんは、
入札に参加している企業の健全な企業活動を保護し、
かつ、公共工事の元となる納税を行ってくださっている市民の皆さんに
対して税金がどのように使われたのかを正確に報告する為に、
歩切りの有無を公示し、工事の落札率等について誤解を招かない数字を
公表する必要性があると思います。
この件は、それで一件落着するのではないでしょうか?
ちなみにちなみに。。。
お役所さんが歩切りの有無の公示を行わずに
歩切りを実施し続けた場合には。。。
請負業者から
国家賠償法に基づく損害賠償請求の対象とされる
可能性はあるかもしれませんね(恐;)
(平成22年一部追記。)
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